第N回 冷めた関係(1)

あらすじ

クリスマスデートをAと楽しく過ごしたが、現状の思いも告げられず、プレゼントのネックレスも押し付けた形で渡してしまい男は後悔する。
新年となり、前回の失敗を取り返すべくAに会う。

本編

起床場所はホテルだった。
ホテル代も合わせ、今朝の朝方までで4万円は使っていた。
酔いもまだ少しばかり残っている。

寝る前に一方的に連絡したが、Aとは12:00に明治神宮で待ち合わせ予定だ。
現在は7:00、会う前にやることもある。
急いで服を着てホテルをでる。

冬の朝の五反田は澄み切っている。
空が青かった。

家に着くなり、商品取引の準備だ。
今日も秋葉原へ行かなくてはならない。
別に嫌いではないのだが、12:00待ち合わせの予定があると焦りが生じる。
取引のメールを送信して、荷詰めして、着替えて、出かける。

本日の秋葉原もいつもと変わらない。
大盛況のヨドバシカメラ、カラフルな髪の毛。
ただ、取引のメールの返信が来ていない。
返信が来なければ取引ができない。
一旦待つしかなく、腰を下ろして待機だ。

待てども返信は来ない。
時間は11:30になっていた。
これは直談判にいってよいだろう。
そう判断し、取引先へ押しかけた。

扉をくぐる。
やはりというか予想通り暇そうな顔が2つ並んでいる。
聞いてみると為替の影響があるため時間をいただいていたとのことだった。
なるほど、次回からは気をつけよう。

取引も無事に終了した。
さて急いで向かわなければと駅の改札を通る。
遅れるのは確定だが、足は急がせる。
一番到着が早い電車に乗れたのであとは任せた。

ここは代々木駅。
明治神宮へは20分もあればたどり着けそうだ。
先ほどAには言っておいた。

歩を進めること10分。
Aから連絡がきた。
まじか。東京には明治神宮前駅があったのだ。
即座に引き返し、明治神宮前駅ないしは原宿駅へ向かう。
毎回なにかしらで時間通りには出会えない。
すまなく思うが、そういう運命なのだと諦めてほしい。

さて、駅に到着したのでAを探す。
いた。Aだ。
近づき声をかける。
今日は黒い上着を着ている。
クリスマスプレゼントのネックレスも付けている。
一応会う前はネックレスをほめ、抱擁するつもりだった。
が、なぜか。
抱擁したいとも、ましてや手をつなぎたいとも思えなかった。

気分も上がらない。
ワクワクも感じない。
愛おしさも出てこない。

Aとは未だに手をつないだまでの関係だ。
それは男女の関係に進むことに遠慮があることも事実だが、好みの問題もあったからだ。
長い時間を過ごせば気にならなくなるかと思い、約半年関係を続けてみた。
だが、どうしても気になってしまう。
一緒にいると安心するのが事実であるとしても。
内面が一番大事だと言われるが、それも自分でもわかるが、どうしても。

愛とは自己犠牲だとの仮定どおり、愛おしくなるにも努力が必要なのかと思う。
そうであれば、これ以上の努力と対価はどうしても釣り合わない気がしてしまう。
Aも何を思って関係を続けているのだろうか。
最近は本当にわからない。
しかし、この関係をやめると言い出すこともすぐにはできそうにない。
この関係を壊すのが怖いから。
自分は傷つきたくないから。
自分勝手な人間だ。

クリスマスの後悔とは何だったのだろうか。

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